整骨院・鍼灸院のリピート率の考え方

矢野 敦子の写真 矢野 敦子
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整骨院・鍼灸院のリピート率の考え方

整骨院・鍼灸院の経営において「リピート率」は非常に重要な指標です。
でも実際には、「うちはリピート率が高いですよ」「リピーターが多いです」と漠然と言うだけで、正確な定義や数値を持たずに語っているケースが多いのが現状です。

この記事では、リピート率の正しい定義、計算方法、目標設定の考え方、そして実際にどう改善を考えるかまで、現場で役立つ視点で整理してみます。

整骨院・鍼灸院を経営している、あるいはこれから開業を目指している先生方にとって、経営の羅針盤になるような内容を目指します。

目次

1. リピート率とは何か?正しい定義を確認する

「リピート率」と一言で言っても、実は定義はさまざまです。
まず大前提として、ここでは「初回来院した患者さんのうち、2回目も来院した人の割合」を「リピート率」と呼びます。
これは整骨院・鍼灸院の経営で最もベーシックで重視される指標です。

例:

  • 1ヶ月で初めて来た患者数:100人
  • そのうち2回目も来た患者数:60人
    → リピート率=60%

この「初回→2回目」のリピート率は、新患対応の質や説明、信頼構築のレベルを図る指標です。

その他の「リピート率」もある

経営指標としては、以下のような類似指標もあります。

  • 「○回以上来た患者割合」(例:3回以上リピート率)
  • 「来院継続率」(特定期間内で一定回数以上来院した人の割合)
  • 「離脱率」(来院をやめた人の割合)
  • 「来院間隔」(リピート頻度の分析)

ただし、初回→2回目のリピート率は最もシンプルで改善しやすく、経営の基礎体力を見る意味でとても大事です。

2. なぜリピート率を把握する必要があるのか

整骨院や鍼灸院は、基本的に地域密着型のビジネスです。
新規患者を集めるのにも広告費がかかります。

例えば、

  • チラシ1万部配布して数名の新患獲得
  • ポータルサイトへの月額掲載料
  • Web広告のクリック単価

これらの「集客コスト」は年々上昇しています。

もし新患が来ても、1回で終わってしまえば広告費が無駄になるだけです。
逆にリピートしてもらえれば、初回集客のコストを分散でき、利益率が大幅に改善します。

また、患者さんの健康面でも「1回で治る魔法の施術」は現実にはほぼなく、一定の施術プランを提案し、理解を得て通院を継続してもらうことが非常に大事です。

つまり、リピート率を上げることは、

  • 経営の安定
  • 患者さんの満足度と治療成果

の両方を高める鍵なのです。

3. 目標リピート率はどれくらいを目指すべき?

よく聞かれるのが「目標は何%くらいが適正なの?」という質問です。
ここは業態や商圏、患者層によって正解が一律ではありませんが、以下は目安です。

■ 初回→2回目リピート率の目安

  • 50%未満:危険水域。改善必須。説明不足や接遇問題の可能性大
  • 60%前後:標準レベル。まずはここを下回らないように
  • 70%~80%台:優秀。信頼構築やプラン提案がしっかりできている
  • 80%以上:トップクラス。口コミや紹介も期待できる状態

「自費メイン」「保険メイン」「慢性症状中心」「スポーツ外傷中心」など、院の性質で多少前後します。

■ 継続来院(通院完遂率)の目標

治療計画を立てて「5~6回必要」と説明した場合、最後まで来る人の割合も重要です。

  • 50%未満:治療計画の説明不足、動機付けが弱い
  • 60~70%:標準的
  • 80%台以上:極めて良好

ここも、患者さんへの伝え方・信頼感・予約導線など、すべての接点が問われます。

4. 目標設定をする意味

多くの院では、漠然と「うちはリピーター多いよ」と言うだけで、目標値を設定していません。

でも、目標を決めることで

  • スタッフ間の意識を統一
  • 改善ポイントの把握
  • 施術計画や問診の質向上
  • 患者さん対応のレベルアップ

が可能になります。

「60%を切ったら、初回対応を見直そう」「70%を目指すために、説明資料を整えよう」と、数値を起点に具体策が出てきます。

「感覚」ではなく「データ」を使うのが経営です。

5. リピート率を上げるために考えるべきこと

「じゃあ、どうやって上げるの?」という声も多いでしょう。
以下に主なポイントを整理します。

①価値観のすり合わせ

初回対応で一番大切なのは「価値観の共有」です。
患者さんは「とりあえず1回試す」「様子見」の気持ちで来ることが多い。

だからこそ、

  • どうして通院が必要か
  • 何回くらい必要か
  • どんな変化が期待できるか
  • 来ないとどうなるか

を伝えることが重要です。

「治療計画」の提案は押し売りではなく、患者さんの未来のために説明するものです。

②問診と説明の質

初回問診で「痛みの原因」「患者さんの希望」をしっかり引き出す。
そしてそれを踏まえて、納得感のある説明をする。

よくあるNG例:

  • 「来たいときに来てください」
  • 「様子見ましょう」

これでは、患者さんは次回来る理由を見失います。

③予約導線を整える

「じゃあ次回いつ来ればいいですか?」を曖昧にせず、

  • その場で次回予約を取る
  • 予約が取りやすいシステムを導入する
  • リマインド連絡を入れる

など、通いやすさを作ることも大事です。

④スタッフ教育とチーム対応

リピート率は院長一人の問題ではありません。
受付対応、電話対応、院内の雰囲気も大きく影響します。
スタッフ全員が「再来院を促す」意味を理解し、一貫性を持つことが必要です。

⑤サービス全体を見直す

結局、「また来たい」と思ってもらえる価値を提供できているか。

  • 技術力
  • 清潔感
  • 接遇力
  • 価格設定

すべてのバランスが問われます。

まとめ

整骨院・鍼灸院経営における「リピート率」は、単なる数字ではなく経営の生命線です。
新患を増やすだけではなく、来てくれた患者さんにきちんと通ってもらい、治療計画を完遂してもらうことで、患者さんの健康も守り、院も安定経営を実現できます。

そのために

  • 「初回→2回目リピート率」を正しく定義して計測する
  • 適正目標(60%~70%以上)を設定する
  • スタッフ全員で目標を共有し改善に取り組む

が欠かせません。

「うちは感覚でやってる」「患者さん次第だから仕方ない」ではなく、経営者として数値を見て、施策を打ち、検証し続ける姿勢が必要です。

リピート率の改善は、患者さんとの信頼関係を築くことそのものです。
ぜひ一度、数字を出し、現状を見つめ、改善プランを考えてみてください。
それが院の未来を大きく変える一歩になります。

矢野 敦子の写真
著者:矢野 敦子

株式会社クロスリンク代表取締役 兼 マッサージコンシェルジュ®️

新卒で凸版印刷株式会社に入社し営業職に従事。途中、株式会社博報堂へ出向し大手自動車会社のプロモーション戦略の企画立案から実施までを行う。

その後、株式会社エムアウトに参画。新規事業の立ち上げを経験したのち、2010年に株式会社クロスリンクを設立。2012年に株式会社エムアウトからMBOを実施し、現在に至る。

2022年度東京女性経営者アワード「持続経営部門」受賞

【公式】X(旧:Twitter)

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